コンビニでの証明書発行について
近畿大学の以下のニュース。
【日本初】近畿大学の在学生・卒業生は全国のコンビニで卒業証明書等の各種証明書の取得が可能に! - BIGLOBEニュース
近畿大学はチャレンジングな大学だ。マグロ大学等、広報では群を抜いている。その効果からか、全国でも志願者ナンバーワンの大学となった。いつかの記事でも触れたように、大学という業界は非常に保守的な業界であり、そういった意味では非常にうらやましく感じる面もある。
このニュースについて、情報管理と値段という側面から触れたい。
まず、情報管理について、元々こうしたことができることは大学関係者なら知っていただろう。しかし、情報管理の面を考えた場合、少々リスクがあるように思う。自大学からの情報漏えいに考慮する必要があるのとともに、委託先からの漏えいも考慮する必要があるからだ。情報というのは、それに触れる範囲を限れば限るほど漏えいはしづらくなる。当然ながら守る場所が少ないからだ。成績情報は、個人にとっては最も秘匿したい情報の1つである。そうした懸念があるから、大学関係者はなかなかこうした委託に踏み切れない。
委託先のNTT西日本のHPを見たところ、まず大学のサイト等で事前申請したものがPDF化され、それがNTT西日本のサーバーを経由し、発行できるようなイメージかと思う(以下別紙1参照)。
恐らく発行後は即時データ消去するはずなので、そうした意味では、委託先から漏れる可能性があるのは、発行申請をしたものだけとなる(もちろんなりすましの申請等の他のリスクもあるが)。そのリスクと利便性を天秤にかけ、利便性の方が高いという判断なのだろう。こう言ってはなんだが、私もそこまで大きなリスクではないと思う。
次に値段の件。1通1,000円+印刷代80円・・・非常に高いというのが第一印象。
以前、大学の証明書の値段ってどうやって決まっているのかという疑問を持ったことがある。調べてみると、証明書の値段は大学毎に違い、和文の証明書は安いところで100円、高いところでは500円もする。英文はこれに×3をするところが多い。
つまり、証明書の値段は大学が勝手に決めているのだ。住民票なんかも自治体ごとに違うこともあって、各大学の裁量に任されているのだろうというのがその時の結論だった(学内の誰に聞いてもわからなかったので)。
証明書の代金は、発行手数料という形で大学の収入になる。実際、発行する手間はシステム化してしまえばほとんどない。恐らくではあるが、最初の科目データ登録の手間、システムの維持代、発行する職員の人件費等で決められているのだろう。大学によっては一つの収入源と位置付けているところもあるかもしれない。英文が3倍なのは、発行する人が少ない分、それに対する費用対効果ではないかと推測される(未だに英文はシステム化せず、手作りしている大学もあるが)。不思議なことに在学生と卒業生で値段が違う大学もある。在学生は補助で安くしているという認識なのだろうか。
個人的には1通200円か300円くらいが妥当なところではないかなと思っている。もちろん、大学の規模(年間の発行枚数)に拠るところがあろうが(投資した分がペイできるかできないか等)。
今回の近畿大学の取り組みは、時間の節約といった面での効果が高い。特に、就職活動等で全国を飛び回る学生や、急遽証明書が必要になった卒業生にとっては、その利便性は非常に喜ばれることだろう。しかし一方で、やはり高いなという印象は拭えない。近畿大学のHPを見たところ、通常これらの証明書は1通100円である。恐らく申請者が多くはいないとの予測から、システム維持費としてこうした値段にせざるをえなかっただろうと推測する。
自大学で取り入れるかと言われると、費用対効果の面を考えれば微妙である。値段を考慮すれば、就活生には余分に証明書を発行して持っていくよう指導するし、卒業生には速達で送ったり、提出先に連絡をしてもらったうえ、提出先に直接大学から送ることもできる。
こうして見ると否定的に思えるが、需要がないわけではないし、利便性といった観点では非常に優れているし、恐らくリスク管理も私が思っている以上にしているだろう。また、こうした新たな取り組みも大学はしていくべきだという観点から、個人的にはこうした姿勢を歓迎したい。