日々綴(とある私立大学職員)

思うことを書いていこうと思います。主として大学関連の話題。ただし、それ以外も(とある私立大学職員)

学長選考時の意向投票について②(同族経営について)

 タイトルと内容にズレがありますが、ご了承ください。

 

 前々回のブログで、学長選考時の意向投票について書いたところ、他の大学職員の方にTwitterで触れていただき、一時的にアクセスが増えた。アクセスが増えることは素直にうれしいが、それを意識して書かないようにしたい。

 

 あくまでこのブログは私の書きたいことを書く。そこはブレないようにしたい。

 

 触れていただいた@daigaku23さんありがとうございます(紹介して良かったでしょうか?不都合があればご連絡くださいm(_ _)m)。

 

 さて、同じ@daigaku23さんに「一族経営の大学に勤めていると選挙すらないこともある」というご意見(?)をTwitter上でいただいた。

 

 以前、私もこの一族経営(同族経営)について考えたことがある。

 まず、同族経営とは論点がずれるが、縁故採用について触れたい。大学業界は少なからず縁故採用がある。私の同期にも自分で縁故で採用されたという職員が複数いた。私自身、親には非常に感謝しているが、恵まれた環境で育ってきたわけではなく、こうした縁故も全くない。そのため、縁故採用に対し非常に嫌悪感を持っていた。

 

 ところが、私のかつての上司は縁故採用を非常に推奨していた。縁故であれば、縁故をした人の保証があるというのだ。当時は全く理解できず、非常に反発を覚えた。しかし、プラスの視点で考えると、採用活動で見ることができるものには限界があり、縁故というのはその本人の"普段"を知っている。本当の実力がわかっているという趣旨で、縁故の方が良いということだったのかもしれない。

 私個人は、未だに縁故には否定的で、社会階層の固定化(再生産)に繋がること、雇用機会の均等の観点等からどうかと思っている。特に、大学職員は高給だと言われる職であるし、大学は準公的な機関であるのだから、少々厳しいくらいの基準が必要で、縁故は取らない、実力が抜けていれば取るくらい自主規制をすべきではなかろうかとすら思っている。

 

 このような経緯や、よくある同族経営の失敗例などを見て、同族経営に対して非常に懐疑的な見方をしてた(縁故と同族経営は違いますが、同じように公正な競争ではないという意味で)。

 

 ひとまず私立大学において、同族経営がどれだけの影響を与えているかについて見てみたい。

 

 私立学校法によれば、意思決定を左右すると見られる役員は理事と監事である。この2つは置く必要があるが、これ以外を置いてもいいのか、置いている大学があるのかは不明。国立大学では、上記に学長が加えられているところもあるようであるが、私立学校法第38条では学長は理事になるとされている。

 

 ひとまず、設置が義務付けられている理事と監事について、私立学校法第38条第7項では、「役員のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等以内の親族が一人を超えて含まれることになつてはならない。」とあり、一定以上の同族経営を排除している。しかし、文科省のHPにおいて「同族経営」で検索すると、役員ではない評議員について触れられている。

 

 役員ではない評議員、評議員が構成する評議員会での審議事項とは?

 

 学校法人の運営に関する重要事項についての諮問機関であり、私立学校法第42条には次のように記載されている。

ーー以下抜粋ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第四十二条  次に掲げる事項については、理事長において、あらかじめ、評議員会の意見を聞かなければならない。

一  予算、借入金(当該会計年度内の収入をもつて償還する一時の借入金を除く。)及び重要な資産の処分に関する事項

二  事業計画

三  寄附行為の変更

四  合併

五  第五十条第一項第一号(評議員会の議決を要する場合を除く。)及び第三号に掲げる事由による解散

六  収益を目的とする事業に関する重要事項

七  その他学校法人の業務に関する重要事項で寄附行為をもつて定めるもの

2  前項各号に掲げる事項は、寄附行為をもつて評議員会の議決を要するものとすることができる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 こうした重要事項を審議する評議員に同族の制限がないことに触れられている(厳密にいえば、教授会規程が変わったように、「意見を聞く」とあるので、審議事項とは言えないかもしれないが)。

中央教育審議会大学分科会(第27回)−参考資料2:学校法人制度の改善方策について−3.評議員機能の強化について

 法律上では触れられていないが、評議員会においても同族は3分の1以内の措置を講じることが必要とされており、実際に指摘もあっているようだ。これについては以下のブログが詳しい。

d.hatena.ne.jp

 結局は同族経営を制限はしつつも、排除はしていない。それは、同族経営のメリット建学の精神の継承がしやすい、同族経営で上手くいってきた経緯もあるからだ。これについては、以下の議事でも触れられている。

学校法人制度改善検討小委員会(第9回) 議事要旨:文部科学省

 

 私自身、大学と企業は違うとしながらも、同族企業についての記事をいくつか読み、同族経営にもメリットはあり、一概に否定はできないと思っている。以下、私が以前に読んだ記事である。これ以外にもあった気がするが。

同族経営は「悪」なのか? | ASIAN NOMAD LIFE

business.nikkeibp.co.jp

 

 私なりの見解では、大学の同族経営におけるメリットは、

 1.長期的にブレない政策ができる

   →選挙で学長等が代わる度に政策がブレるようなことが生じにくい。

    人気取りの政策をせずに済むので、痛みを伴う改革も行いやすい。

 2.選挙等のコストが発生しない

 3.次の担い手が決まっているため、人材投資の集中ができる

 

 逆にデメリットは、

 1.同族が引き継ぐことによる他の職員等の意欲の低下

   →どんなに頑張ってもトップにはなれない。

    優秀でない人が引き継ぐこともある。

 2.大学の私物化が起きやすい

   →反対意見を聞かない。

 3.イエスマンの増加

 

 これ以外にもあるだろうが、代表的なものはこれくらいではなかろうか。良くも悪くも、同族で引き継ぐ人が優秀か、そうでないかによって左右される。そういった意味で、同族経営の大学においては、後継者の育成が非常に大事になってくる。もちろん、後継者を支援する者の育成についても重要なのは言うまでもない。

 

 同族経営大学においては、そのメリットをどう生かすか。デメリットが出ないようにするにはどうするか。また、デメリットが出てしまった時はどう止めるか。学長権限強化に対する不信任措置のような歯止めと同様に、暴走した場合、それを止める仕組みが必要だろう。選挙自体がない同族経営では、なかなか難しそうではあるが。

 

 設置者に対する敬意ははらうべきだが、寄附した時点でその手を離れるのではとも思う。この辺り再度寄附行為を見直してみるかな。

 

 それにしても引用が多い・・・論文においては、如何に引用が少ないかが優秀な論文である証拠だとされるのに。

 

 ※ 今回のように、ご意見やご指摘いただけると非常にありがたく思います。より深く掘り下げることができるので(深くなっているかは?ですが)。