日々綴(とある私立大学職員)

日々思うことを書いていこうと思います。主として大学関連の話題。ただし、それ以外も日々の思いをつらつらと(とある私立大学職員)

所得連動型奨学金について

 標記の件について、記事を紹介してもらい読んだ。

 大学無償化の本当のコスト:英国から学ぶ教訓

 https://www.rieti.go.jp/jp/special/p_a_w/094.html

 読んで面白いなと思った点は、

 ・イギリスの場合、学費を有償にした後の方が進学率が上がるとともに、年齢層が上の進学者数も上がっていること。

 ・社会的格差の縮小にも寄与したこと(貧困層の進学率も向上。ただし、まだかなり大きな差)

 ・授業料導入によって高等教育の質が上がったこと(元々なかったものが創設されたため、学生一人当たりの資金が増加)

 

 疑問に思った点

 ・授業料有償化は所得連動型ローンであること、また生活費の補助も有償化後増えている。進学率向上は所得連動型による収入確定後の安心感からなのか、それとも生活費の援助が増額されたことによるものなのか。両者が組み合わさっているのだろうが、どちらの影響がより大きいのか。前者は無償の時には不要だったわけで後者の影響がより強いものと思われる。そう考えると適切な生活費の補助はいくらなんだろうか。

 ・所得連動型の場合、卒業後海外に出た場合どうするのだろうか。所得の把握をどうするか、また返済金額は。

 調べてみたところ、イギリスの場合は現地での物価水準等をもとに決めているようだ。

http://www.jasso.go.jp/about/statistics/__icsFiles/afieldfile/2015/10/19/ch5_studenloanuk.pdf

 月々の返済額を算定する際、どのような閾値を設定するかの問題が生じる。なぜならば、渡航先の国によって、物価や給与の水準は異なるため、イギリス国内で適用している閾値(例:16,910 ポンド(Plan1 の場合))を単純に現地の通貨単位で換算して返済額を算出するのは相当ではないと考えられるためである。このため、海外に居住している場合の閾値は、その在留先の国ごとの物価水準を考慮して計算し設定している。その閾値の額は、世界銀行(World Bank)が公表している情報を利用して計算している。

(略)

返済は口座振替(DIRECT Debit)により行う。

 日本で導入された場合は定額の見込み。

http://www.jasso.go.jp/about/disclosure/sonota/saikenkanrikaishuutou/__icsFiles/afieldfile/2017/06/06/28_1_sankou_shiryou_5.pdf

 (16)海外居住者の所得の把握・返還方法
 定額返還型の場合の返還月額とする

 マイナンバー制度では海外居住者の所得を把握することができないため、卒業後海外に居住した場合の返還月額は、定額返還型の場合の金額とすべきである。なお、海外居住者であってもマイナンバーで所得を把握できる場合には、新所得連動返還型による返還月額による返還を可能とすることが適当である。

 日本より物価水準の低い国にいくと返済がきついという問題点があるのではないか。

・学費有償化によって大学の質が向上したとあるが、有償化した後も大学への補助金は継続されたということだろうか。(イギリスの制度を学んだ記憶があるものの忘れてしまった・・・)

 

 改めて、上記のリンク(学生支援機構のもの)

http://www.jasso.go.jp/about/statistics/__icsFiles/afieldfile/2015/10/19/ch5_studenloanuk.pdf

 を見ると、イギリスの学費の回収率の低さ等々の課題が散見される。日本で所得連動型奨学金を導入した場合、それらの課題とどう向き合うか。

 また、所得連動型奨学金を導入した場合、日本の財政上、大学の補助金を削減するのではないかとも予想される。各大学の財政も逼迫しているなか、大学の役割、そこに求めるもの、あるべき姿などを社会として改めて議論する必要があるのかもしれない。

 

 以下それ以外に思ったこと。

 イギリスの場合、生活費の補助があるのであれば学割は不要では?(実際にはある)

学生優遇のイギリス。日本より恵まれているイギリス大学留学3つの『学割』。 ~Sena.Y(イギリス大学留学生) - 留学プレス(PRESS)|留学・旅・グローバル教育のニュースサイト

 あとは大変失礼ではあるが、明らかに返済が見込めない高齢者等の入学者に所得連動型奨学金を適用するかどうか等も導入時は議論が必要だと思う。