日々綴(とある私立大学職員)

思うことを書いていこうと思います。主として大学関連の話題。ただし、それ以外も(とある私立大学職員)

言葉にすること

 自分は”言葉にすること”が得意ではない。

 ”なんとなく”や”ニュアンス”で伝えてしまうことがたくさんある。

 恐らく語彙力の問題だろうと思う。

 

 昔からあまり本を読む家庭ではなかった。また、家では毎日テレビがついていて、流れているのはバラエティでニュースはほとんど見ていなかった。家計も裕福な方ではなく、親戚関係もほぼ高卒。大学に行くなんてってことも言われていた。ただ、小学校高学年ぐらいからか、突如として成績が上がったこともあり、そこから大学には絶対に行くと決めていた。

 

 そんな環境から、少しずつ親を懐柔(?)し、テレビがついているとしてもニュースになり、徐々に本を読むようになった。ただ、元から本を読んでいる人にはかなわないなと思う瞬間がある。それが語彙力。自分の中にある言葉はこれからも増えていくけれども、ずっと使ってきた言葉というのは抜けきれないものがあるし、使ってきていない言葉はなかなか使えない。使っている言葉だからこそ腑に落ちるものがあって、自分としても理解しやすいんだと思う。

 

 こういう習慣等の身についたものを思うと、育つ環境って大事なんだなとたまに思う。

 

 学ぶことはいつからでもできる。学びを継続すること、習慣化すること、それこそが大きなものだと信じている。ただ一方で、苦手なことはなかなか得意にならない。

 

 言葉にすることは得意じゃない。けれど、だからと言ってそこに甘んじていてはいけない。それも学びだと思って、もう少し表現力を磨きたいなと思う。

 

 今、さまざまなことで意見交換をさせていただいている方々がいて、たくさんの刺激を受けている。それとともに、自分の力の無さも感じる。そこで留まるのか、そこから進むのか。自分次第。もう一歩、踏み出そう。

大学等設置に係る寄附行為(変更)認可後の財政状況及び 施設等整備状況調査結果について(平成29年度)

 大学等設置に係る寄附行為(変更)認可後の財政状況及び施設等整備状況調査結果について(平成29年度)が公表された。

 

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/02/__icsFiles/afieldfile/2018/02/23/1401633_001.pdf

 

 幾つか気になる記載があったため、触れてみたい。大学名は上記に記載されてはいるが、流石にここに記載するのは憚れるため、気になる方は上記を参照願いたい。

 

 1.研究費への言及

事業活動支出に対する教育研究経費の割合が同系統の大学等を設置する学校法人に比べ低く、また、近年この割合が低下傾向にあることから、教育研究条件の充実向上を図ること。

 2.経営状況

負債率が高いことから、負債について計画どおり償還し、負債額の減少を図ること。

 3.授業料に対する経費割合への言及

学生生徒等納付金に対する経常的経費支出の割合が同系統の大学等を設置する学校法人に比べて低いことから、同納付金の学生への還元を図ること。

 4.情報の公表について

学校法人の公共性に鑑み、財務情報の一般公開(ホームページへの掲載)について積極的に対応すること。 

 

 1.研究費への言及について

 研究者である教員をある種勇気づけるものであると思う。近年、教員への研究費は厳しい状況であるとの報道や大学教員自身からの公表で表に出てきている。これら研究費について、是正意見として公式に見解が出されるのは評価されるべきことだと思う。

 

 2.経営状況について

 私自身、財務に疎いので、比較すべき大学の経営状況等はなかなかわからない。財務情報については公表されているものの、一つ一つを追っていくのは大変であるため、こうした指摘で状況がわかるのはありがたい。

 

 3.授業料に対する経費割合への言及について

 学生が納める授業料に対して、経費割合が低いという指摘である。授業料がきちんと学生に還元されているかどうかという点をこうした調査で言及しているのは評価されるべきだと思うし、さまざまなところで公表されるべきことだと思う。

 

 4.情報の公表について

 大学の財務情報については、私立学校法で作成と備付義務が規定されている。ただし、公表についての言及はない。一方で、大学は国からの補助金が導入されていることから公共財としての側面も持つ。そうした意味で広い情報公開が求められており、一般公開への言及がされているものだと思う。教育情報についても積極的な公開が求められており、それに関連したものであろうと推測される。

 私立学校法

(財産目録等の備付け及び閲覧)
第四七条 学校法人は、毎会計年度終了後二月以内に財産目録、貸借対照表、収支計算書及び事業報告書を作成しなければならない。
【則】第四条の四
《改正》平16法042
2 学校法人は、前項の書類及び第三十七条第三項第三号の監査報告書(第六十六条第四号において「財産目録等」という。)を各事務所に備えて置き、当該学校法人の設置する私立学校に在学する者その他の利害関係人から請求があつた場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならない。

 

 久しく大学関連で書いていなかったが、なかなかおもしろい記載があったので触れてみた。まだまだ知らないことが多いなと思う次第。

 もっと学ばねば。

原因と結果の経済学(NHKの番組オイコノミアより)

 NHKで放送されているオイコノミアをたまに見る。

 今回見たのは「原因と結果の経済学」

 とても面白かったので紹介したい。

 

 因果推論(因果関係があるかどうか)、見せかけの相関(相関が無いにもかかわらず、相関があるように見えること 例 体力があれば勉強もできる)など、経済用語が満載だった。

 

 因果関係があるかどうかのチェックポイントは

 ①まったくの偶然

 ②第3の要因

 ③逆の因果関係

 ということ。3つのチェックから、因果関係があるかどうかを疑うこと。


 また、人が因果関係があるとつい思ってしまうのは

 ・ヒューリスティックバイアス

 (自分の経験や体験で見誤る。自分の周りの情報だけで判断)

 ・チェリー・ピッキング
 (情報の中から、つい自分に都合の良いものを選ぶ)

 があるからだという。

 具体的には、受動喫煙の法律、育休の延長が例として挙げられ、政策においては、科学的根拠に基づいて、政策判断しなければならないということだった。反事実(それをしなかった場合)を想像し、原因は本当にそれなのか、検証する必要がある。

 

 チェリー・ピッキングは、非常によくわかる。自分にとって都合の良い情報をついつい持ってきてしまうというのはあるものだ。自分の正しさを証明するため、自分の論理を補填するため。そこに終始するのではなく、本当に正しいかどうか、冷静に判断する必要があるなと思った。

 

 以前IRについてブログで触れた機会があるが、大学がとる政策や方針についても、こうした因果関係があるかどうかは議論する必要がある。主観や思い込み、そういった自分のバイアスや通説から判断してしまうことはあるものだ。大学だからこそ、こうした科学的な検証を使って政策判断をしてほしいなと思う。

人はミスをする

 人間だからミスを全くしないなんてことはありえない。だけれども、それをいかにゼロに近づけるかという意識を持つことは大事だと思う。

 また、自分が間違っているかもしれないと思うことは大事だ。「絶対に間違わない」なんてことはない。

 

 自分は間違いを犯す。そう思っているだけで仕事のミスは減る。

 ミスを減らすことばかりに目がいってはもったいないけれども、大学の職員(事務)はミスをしないことが当然だとされる。しないことが当たり前なのだ。

 

 Twitterでも呟いたが、自分に絶対の自信を持つ人がいた。説明を聞くとどう考えても常識的におかしいと思うのだが、それを指摘したところで間違っていないと主張するので埒があかない。なぜそこまでの自信をもてるのか、ある意味すごいなと思った。加えて常識って人によって違うものだから、常識って難しいなとも思った。

 

 最終的には根拠を示し、誤っていることを理解してもらった。だけれども、誰からであれ指摘をされた場合、間違っているかもしれないと思わないのかな?との疑問も思った。正直、一緒に仕事をするのは怖い。

 

 完璧な人はいない。人間だからこそミスをする。だからこそ、自分が間違っているかもしれないという意識を持つことは大事なのではないだろうか。そういう人とこそ一緒に働きたいなと思う。

JUAMへの提言

 別の考え事でアイディアが浮かびそうだなと考えていたら、JUAMへの提言へ思考が移った。

 

 以前JUAMで会員数の伸び悩み等があるとの話を聞いて。

 会員数を増やしたいのであれば、例えば次のような手を打ってはどうか。

 1.新規会員の初年度の会費を10,000円→5,000円に割引く。

 2.他の学会(大学教育学会等)と連携し、他の学会員と兼任会員であれば1と同様に費用を割引く。

 特に2をすることで、一度離れた会員も戻ってくることが期待される(多分)し、より研究熱心な会員が増えることで研究活動の活性化も期待されるのではないか。

 

 上記に加えて、大学行政管理学会の会長等を本務の無い退職した方にしてはどうかとも思っている。というのは、行政管理学会の正会員は、すべて本務を持った大学・短期大学の教職員である(実際は職員がメイン)。職員は、組織の方針から外れたことはしづらい。

 このような大学行政管理学会の大学職員がメインの実務者団体は、実務者の立場から文科省等へさまざまな提言があっていいと思う。それが本務をもった大学職員だとしづらいのではないか。(私のような下っ端が知らないだけで実際にはしているのかもしれないが)

 

 なんてことを思った次第。

所得連動型奨学金について

 標記の件について、記事を紹介してもらい読んだ。

 大学無償化の本当のコスト:英国から学ぶ教訓

 https://www.rieti.go.jp/jp/special/p_a_w/094.html

 読んで面白いなと思った点は、

 ・イギリスの場合、学費を有償にした後の方が進学率が上がるとともに、年齢層が上の進学者数も上がっていること。

 ・社会的格差の縮小にも寄与したこと(貧困層の進学率も向上。ただし、まだかなり大きな差)

 ・授業料導入によって高等教育の質が上がったこと(元々なかったものが創設されたため、学生一人当たりの資金が増加)

 

 疑問に思った点

 ・授業料有償化は所得連動型ローンであること、また生活費の補助も有償化後増えている。進学率向上は所得連動型による収入確定後の安心感からなのか、それとも生活費の援助が増額されたことによるものなのか。両者が組み合わさっているのだろうが、どちらの影響がより大きいのか。前者は無償の時には不要だったわけで後者の影響がより強いものと思われる。そう考えると適切な生活費の補助はいくらなんだろうか。

 ・所得連動型の場合、卒業後海外に出た場合どうするのだろうか。所得の把握をどうするか、また返済金額は。

 調べてみたところ、イギリスの場合は現地での物価水準等をもとに決めているようだ。

http://www.jasso.go.jp/about/statistics/__icsFiles/afieldfile/2015/10/19/ch5_studenloanuk.pdf

 月々の返済額を算定する際、どのような閾値を設定するかの問題が生じる。なぜならば、渡航先の国によって、物価や給与の水準は異なるため、イギリス国内で適用している閾値(例:16,910 ポンド(Plan1 の場合))を単純に現地の通貨単位で換算して返済額を算出するのは相当ではないと考えられるためである。このため、海外に居住している場合の閾値は、その在留先の国ごとの物価水準を考慮して計算し設定している。その閾値の額は、世界銀行(World Bank)が公表している情報を利用して計算している。

(略)

返済は口座振替(DIRECT Debit)により行う。

 日本で導入された場合は定額の見込み。

http://www.jasso.go.jp/about/disclosure/sonota/saikenkanrikaishuutou/__icsFiles/afieldfile/2017/06/06/28_1_sankou_shiryou_5.pdf

 (16)海外居住者の所得の把握・返還方法
 定額返還型の場合の返還月額とする

 マイナンバー制度では海外居住者の所得を把握することができないため、卒業後海外に居住した場合の返還月額は、定額返還型の場合の金額とすべきである。なお、海外居住者であってもマイナンバーで所得を把握できる場合には、新所得連動返還型による返還月額による返還を可能とすることが適当である。

 日本より物価水準の低い国にいくと返済がきついという問題点があるのではないか。

・学費有償化によって大学の質が向上したとあるが、有償化した後も大学への補助金は継続されたということだろうか。(イギリスの制度を学んだ記憶があるものの忘れてしまった・・・)

 

 改めて、上記のリンク(学生支援機構のもの)

http://www.jasso.go.jp/about/statistics/__icsFiles/afieldfile/2015/10/19/ch5_studenloanuk.pdf

 を見ると、イギリスの学費の回収率の低さ等々の課題が散見される。日本で所得連動型奨学金を導入した場合、それらの課題とどう向き合うか。

 また、所得連動型奨学金を導入した場合、日本の財政上、大学の補助金を削減するのではないかとも予想される。各大学の財政も逼迫しているなか、大学の役割、そこに求めるもの、あるべき姿などを社会として改めて議論する必要があるのかもしれない。

 

 以下それ以外に思ったこと。

 イギリスの場合、生活費の補助があるのであれば学割は不要では?(実際にはある)

学生優遇のイギリス。日本より恵まれているイギリス大学留学3つの『学割』。 ~Sena.Y(イギリス大学留学生) - 留学プレス(PRESS)|留学・旅・グローバル教育のニュースサイト

 あとは大変失礼ではあるが、明らかに返済が見込めない高齢者等の入学者に所得連動型奨学金を適用するかどうか等も導入時は議論が必要だと思う。

映画「ギフテッド」を見て

 映画「ギフテッド」を見た

 Twitterでも書いたが、才能がある人は特別な教育を受けることがその人にとって幸せなのだろうかと考えられる作品だった。

 

 特別な教育を受けることが人類のためになる。それはそうかもしれないが、その人にとっての幸せとはなんだろうか。

 

 日本には飛び級制度がない(千葉大学や大学院等の飛び級の一部例外は除く)。それは才能のある人にとっては退屈なことなのかもしれないが、同年代との付き合い方や発達段階での心の成熟にとっては飛び級が無い方が良かったりするんではないだろうか。

 

 飛び級=善だとは必ずしも言い切れない。

 

 調べられていないが、飛び級に関する本や論文を見てみたい。海外では制度ができて年月が経っているから、きっとそれらについても考慮された制度や仕組みになっているだろう。今後の興味関心。